就業規則は、従業員の労働条件や、従業員が守るべき規律などを定めるもので、基本的には使用者側が一方的に作成するものです。そのため、個別の合意がないまま、はたして個々の従業員を拘束することができるのか問題となりうるのですが、就業規則の内容が合理的な労働条件を定めており、それを従業員にきちんと周知しているのであれば、就業規則で定める労働条件を労働契約の内容とすることができます。
逆に使用者と従業員が個別の労働契約で定めた労働条件の内容が、就業規則で定めている労働条件よりも従業員に不利な内容となっている場合には、たとえ使用者と従業員との合意によるものであっても、その不利な労働条件は無効になります。
従業員の労働条件(賃金や退職金など)を変更するには、原則として使用者と従業員がお互い合意することが必要です。したがって、就業規則の内容を従業員にとって不利益に変更する場合も、原則として従業員の合意が必要です。そして、使用者と従業員との力関係を鑑みれば、従業員の「合意」を認定するには、慎重な判断が必要とされており、判例では、①変更される労働条件の不利益の内容及び程度、②同意に至った経緯と従業員の態様、③先だってなされた従業員への情報提供と説明内容などに照らして、従業員が自由な意思に基づいて同意したと判断されているような合理的理由が客観的に存在するか否かという点で判断されるとしています。
また、例外的に、従業員の同意を得ずに就業規則で労働条件を従業員に不利益に変更するには、①変更後の就業規則を従業員に周知させること、②変更による不利益の程度、変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働組合等との交渉状況、その他の事情に照らして合理的であることが必要とされています。
変更内容の合理性については、例えば賃金を数十パーセント減額する、退職金を半減するというような内容では、合理性を否定され、変更が認められない傾向にあります。
労働条件の不利益変更は、言うまでもなく従業員とのトラブルに結びつきやすいので、内容や手続きを慎重に検討しましょう。