社員が業務以外の原因で、病気やケガである程度の期間、働けなくなった場合に会社はすぐに「解雇」はできません。
この場合、解雇を猶予する制度としての傷病の「休職制度」を設けている会社が多くあります。ただし、この休職制度は法律で定められているものではないので、要件などを設定する場合は就業規則の定めによることとなります
故に、休職制度を設ける場合、就業規則の条文をきちんと整え、運用することが会社のため、社員のためになるのです。
【事例:石長事件 京都地裁 平成28年2月12日】
○社員が通勤中に交通事故により負傷した。
○社員は約6ヵ月の治療期間を要する診断を受けた。
○その後、社員は別の病院で通院治療を受け、1ヵ月の安静加療を要すと診断された。
○社員は事故から3ヵ月経過後服飾を申し出たが、会社は「治療に専念するように」と指示を出した。
○その後、社員は「軽作業可能」と記載された診断書を会社に提出するも、「引き続き治療を専念し、業務を引き継ぐよう」に指示をした。
→さらに、事故から6ヵ月経過前に手術を要するとなり、術後、2~3ヵ月はリハビリ通院を要する旨の診断を受けた
○「事故当日から6ヵ月経過する日が休職期間の満了」であるとし、いったん退職するように社員に働きかけ、承諾をもらった。
→休職期間は事故当日から6ヵ月経過までと説明した
→社員は再雇用についての書面を求めたが、会社はこれを拒否した
→上司からは「再雇用は約束されている」と口頭で述べられた
○退職届を提出し、3ヵ月が経過した時に再雇用を求めたが、会社はこれを拒否したため、社員は裁判に訴えた
裁判所の判断
○休職制度は就業規則により制定されている。
○就業規則には「業務外の傷病により引き続き1ヵ月を超えた欠勤したときに休職」と記載されている
○休職制度の始まりは「事故の当日」からではない
→会社側の説明は間違っていた
○仮に、この説明を持って休職がスタートしたとすれば、就業規則の要件を欠く休職命令である
○この場合、仮に社員と合意があっても、就業規則の条件より休職命令が社員にとって不利な状況となる。
○よって、休職期間満了による退職は「無効」である。
→会社側が敗訴した
この事例で問題となったのは、6ヵ月の休職期間ではなく、その前の欠勤期間のカウントについて問われました。
就業規則で「自ら」決めた手続きを守る必要が会社にはあり、裁判等になってもこの点を厳しく追及されるのです。
仮に、事例の事件で会社と社員が「事故当日から休職が開始された」と合意をしていても、個別の合意で、労働者側が不利になっている者は就業規則の条件に引き上げられるということも確認されているのです。